研究概要 |
本研究の目的は抗凝固薬ワルファリン(WF)の体内動態(PK)と感受性(PD)に関する個体間変動要因について検討し、WFの抗凝固効果の個人差をもたらす因子を明らかにしてそれらの情報をWFの投与量の設定に応用することである。そのために、本年度は血栓症予防の目的でWFを服薬していた日本人193名、白人60名、黒人35名の患者(年齢;1-86才、体重;9.6-150.7Kg)を対象として以下の検討を行った。 1.(S)-WFの肝代謝活性とCYP2C9活性の患者間変動 2.CYP2C9の遺伝子多型(CYP2C9^*1,CYP2C9^*2,CYP2C9^*3)診断 3.PDパラメター(血漿中ビタミンK_1、PIVKA-II、F_<1+2>、Protein C、PICとINR)の患者間変動 以上の検討によりWFの抗凝固効果のPK上の決定因子であるS-WFの肝代謝活性(CLpo,u)について、本年度はCYP2C9遺伝子変異と小児に関する検討結果について報告する。 1.WF光学異性体の肝代謝能(CLpo,u)に及ぼすCYP2C9^*3遺伝子変異の影響:CYP2C9^*3変異を有する日本人の患者ではS-WFのCLpo,uがヘテロ型変異患者で野生型患者の約1/3、ホモ型変異患者では約1/9であり、CYP2C9^*3変異によりS-WFの代謝活性は著しく低下していることが明らかとなった。従ってCYP2C9^*3変異をもつ患者に対してはWFの投与量を低く設定する必要があることが示唆された。 2.小児に対するWFの投与法:小児では成人より(S)-WFの代謝活性が低く、逆に(S)-WFの遊離形濃度あたりのINRは高いためWFの減量が必要であった。 今後はこれらの結果を基にして、WFの投与量と抗凝固効果(INR)の関係に及ぼす各影響因子について定量的な解析を行う予定である。
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