平成12年度は、SDラット(体重200-250g:雄)の心筋細胞にFas-ligand+actino-mycin Dを加えてアポトーシスを誘導し、48時間顕微鏡ビデオカメラを設置して連続撮影を行い、60個の心筋細胞についてアポトーシスの全プロセスにおける機能と形態を観測した。 その結果、正常ラット心筋細胞(rod-Shape:n=60)のFas刺激後のビデオ顕微鏡による観察では、n=36(60%)の細胞で平均16時間後に比較的遅いbeating(17±3/分)が始まった。その後、より速いbeating(35±7/分)を伴いながら長軸方向に縮小化がおこり長方形、棍棒状、或いは骨状に変形した。そのうちn=29(TypeA1とA2)の細胞はさらに平均3時間後平滑な表面を保ったまま球形に完全縮小した。その後beatingは消滅し、0.6±0.2時間後buddingの出現がみられた。n=8(Type A1:13%)の細胞ではさらに10±4時間後にアポトーシス小体形成に到ったが、n=21(type A2:35%)の細胞はbuddingの段階でとどまった。n=7(type A3:12%)の細胞は長軸方向への縮小後、細胞膜が破綻、beatingも消失した。Beatingの最大値は、type A1で72±26/分と最も速く、type A2で29±5/分、type A3で10±2/分の順であった。すなわち、beating開始は心筋細胞の形態変化に先行し、かつその頻度はその後の形態変化に関連していた。その他のn=7(12%)の細胞はbeatingを伴わずoncosis像を呈し、残りのn=17(28%)の細胞では最後までbeatingおよび形態変化がみられなかった。 以上のように、ラット心筋細胞においてはじめて典型的なアポトーシスの形態と機能の全プロセスが解析された。また、beatingとその頻度はin vitroのラット心筋細胞のアポトーシスの過程において重要な役割を果たしていると考えられた。
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