研究概要 |
定期的な中等度アルコール摂取はIschemic Preconditioning(PC)に匹敵する心筋保護効果を有することが明らかになっている。これまで我々は定期的な軽度アルコール摂取も同様の心筋保護効果を有することを報告した。今回、その細胞内シグナル伝達におけるphospholipase C(PLC)およびoxygen free radical(OR)の関与について検討した。1,PLCの関与:2.5%アルコールを飲料水として4ヶ月摂取したモルモットの心臓を用いLangendorff装置にて45分虚血後48分再灌流実験を行った。1)再灌流後の左心室圧はアルコール群で有意に高かった。2)心筋壊死の指標であるCK値はアルコール群で有意に低かった。3)左心室拡張機能の指標としての左室拡張終期圧はアルコール群で有意に低かった。4)PLCの阻害薬であるU-73122を虚血前に10分間灌流した群ではこれらの保護効果は消失した。2,oxygen free radical(OR)の関与:上記と同様の方法でORのscavengerであるN-2-mercaptopropionyl glycine(MPG)を虚血前に10分間灌流した。上記PLCと同様のアルコールによる心筋保護効果が消失するか否か検討中であるが症例数が少なく現在検討中である。以上より,軽度アルコール摂取の虚血心筋保護効果の細胞内シグナル伝達においてはPLCの関与が明かとなった。これは現在提唱されているPCのメカニズムと類似であり、未だ実験的現象で臨床応用の確立していないPCへの応用としての可能性を強く示唆するものである。
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