(目的)左室収縮不全に基因する慢性心不全患者に対する遠赤外線低温サウナ浴を用いた温熱療法の慢性効果を検討する。(対象)New York Heart Association(NYHA)の機能分類IIまたはIII°で、従来の薬物療法を受けている慢性心不全患者11名(年齢59±14歳、左室駆出率31±11%)。(方法)遠赤外線パネルヒーターを用いた医療用温熱浴室に患者を坐位または臥位にて安静にさせ、室温約60℃に維持し15分間の入浴を施した。これを週4〜5回、計4週間施行し、これを1クールとした。1クール終了前後の自覚症状、胸部X線心胸比(CTR)、心臓超音波検査における左室駆出率(EF)、左室拡張末期径(LVDd)、6分間歩行テスト、前腕反応性充血時の血流依存性血管拡張反応(%FMD)、血漿ノルエピネフリン、レニン活性、アルドステロン、BNP、ANP、IL-6、TNF-α、血清細胞接着分子(sICAM、sVCAM)、尿中NO代謝産物(NOx)排泄量の変化を検討した。(結果)4週間の温熱療法により、自覚症状は著明改善2例、改善9例であり、自覚症状の悪化は認めなかった。CTR、EF、LVDdは有意には変化しなかったが、6分間歩行距離は治療後に全例で増加した(371±122to439±135m;p<0.05)。また、血漿ノルエピネフリン(658±212to360±176pg/ml;p<0.01)、IL-6(4.5±2.3to3.0±1.2U/ml;p<0.05)は有意に低下したが、血漿レニン活性、アルドステロンBNP、TNF-α、尿中NOx、sICAM、sVCAM、%FMDは有意な変化をしなかった。(結論)慢性心不全患者に対する低温サウナ浴を用いた4週間の温熱療法は、運動耐容能指標である6分間歩行距離を増加させ、血漿カテコラミン、IL-6濃度を低下させた。
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