研究概要 |
【目的】 慢性心不全患者に対する約4週間の温熱療法の慢性効果を、各種臨床所見、神経体液因子ならびに血管内皮機能の面で多角的に検討する。 【対象】 最大限に薬物療法を施行され、病状の安定したNYHA II〜III度相当の慢性心不全患者12名(男9名、女3名、年齢62±14歳) 【方法】 遠赤外線低温サウナを利用した温熱療法を1日15〜20分、週5回計4週間施行し、治療前後の自覚症状、体重、血圧、心拍数、心胸郭比、心臓超音波検査における左室駆出率、6分間歩行試験、各種血漿中神経体液因子およびサイトカイン濃度、さらに末梢血管内皮機能の指標として、高解像度超音波診断装置とstrain gauge plethysmographyをそれぞれ用いた、上腕動脈の反応性充血時の血流依存性血管拡張反応(%FMD)と前腕血管床の反応性充血時の最大血流増加度の変化を検討した。 【結果】治療前後で、4週間の温熱療法の継続により、自覚症状は改善し、6分間歩行距離は有意に増加した(344±130→390±118m, p<0.01)が、体重、血圧、心拍数、心胸郭比、左室駆出率に有意な変化はなかった。また、血漿ANP、BNPは有意に変化しなかったが、血漿ノルェピネフリン値(594±234→406±176pg/ml, p<0.05)および血漿IL-6(4.38±2.31→3.05±1.14pg/ml, p<0.05)は治療後に有意に低下した。しかし、%FMDおよび最大血流増加度は有意には変化しなかった。 (結論)低温サウナ室を用いた温熱療法は、慢性心不全患者の自覚症状および運動耐容能の改善し、この効果に交感神経緊張の低下や、炎症性サイトカインの抑制が関与する可能性が示唆された。
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