研究概要 |
本研究ではラット動脈血栓モデルを用いて生体内動脈血栓形成における血小板由来MMPの役割を検討した。その結果、MMP阻害薬は血小板凝集を抑制、動脈の血栓閉塞時間を延長、血栓閉塞後の血漿中のactive MMP-2を抑制する事が明らかとなり、生体内動脈血栓形成にactive MMP-2が関与している可能性を示唆された。そこで血小板内のMMPの動態について検討した。1)血栓内MMP発現の有無をモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的検討を行った。血小板血栓上には、MMP-2が染色され、MMP-2の血小板血栓形成への関与が示唆された。2)MMP阻害薬投与前後においてFACSを用いて血小板血栓上のMMP発現の定量評価を行った結果、MMP阻害薬投与後には血少板血栓上のMMP発現は有意に迎制された。このことは、MMP阻害薬の血小板血栓上のMMP発現抑制作用が、血小板凝集抑制、動脈の血栓閉塞時間の延長に関与した可能性を示唆する。3)生体内動脈血栓形成におけるMMP阻害薬のMMP-2発現抑制効果を検討するために血漿および血小板内の,MMP活性の定量評価を行った。その結果、容量依存性にMMP阻害薬は血漿中のMMP-2発現を抑制し、血栓形成抑制に関与している事が示唆される。血小板内においてはMMP阻害薬はMMP-2の放出は抑制しないが、放出されたMMP-2の活性を抑制することが示唆された。4)MMP阻害薬投与前後においてウエスタンブロット法にて血小板内MMP蛋白レベルでの発現の定量的評価を行った結果、血栓形成時の血小板内MMP-2の発現はMMP阻害薬では抑制されなかったが、血栓形成時の上清のMMP-2活性はMMP阻害薬投与により有意に抑制されており、MMP阻害薬はMMP-2の放出は抑制しないが、放出されたMMP-2の活性を抑制することが示唆された。5)活性化MMP-2は血小板表面のαvβ3インテグリンの発現を亢進させるが、IIb/IIIaの血小板表面への発現には影響しなかった。このことは活性化MMP-2はαvβ3インテグリンのup regulationを介して血小板凝集、血栓形成に関与していると考えられた。以上のことによりMMPは活性化することによりαvβ3インテグリンのup regulationを介して血小板凝集、血栓形成に関与し、MMP阻害薬はこのMMP-2の活性化を抑制することにより血小板凝集抑制作用を発揮しているものと考えられた。
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