過剰な心筋線維化は高血圧心の心機能を阻害する。本研究ではTGF-βの心筋リモデリングと心機能障害における役割を、圧負荷ラットモデルを用いて検討した。 Wistarラットにおいて腎動脈直上で大動脈を縮窄し、圧負荷ラットモデルを作成した。線維芽細胞の活性化(増殖および筋線維芽細胞への形質転換)は、術後3日目より7日をピークに認められ、その後心筋細胞肥大と心筋線維化が進展した。28日目に心エコー図法を用いて心機能を評価したところ、左心室のfractional shortningは正常であったが、左室流入波形のE/A比の低下が認められた。また左室拡張末期圧の上昇も認められた。即ち収縮機能は正常だが拡張機能低下所見が認められた。心筋TGF-βmRNA発現は第3日以降認められ、7日をピークとして28日目まで上昇が認められた。TGF-β中和抗体を縮窄手術前日腹腔内投与すると、線維芽細胞の活性化が阻害され、コラーゲンmRNA発現と心筋線維化が予防された。しかしながら心筋細胞肥大には効果が見られなかった。中和抗体は血圧と収縮能に影響を及ぼすことなく拡張機能障害を改善した。 TGF-βは、圧負荷心において線維芽細胞活性化を通じ、心筋線維化と拡張障害に重要な役割を果たしている。本研究は、圧負荷心における心筋線維化と拡張障害を予防するための新たな治療戦略に有用な示唆を与えるものであり、研究結果を現在投稿中である。今後はこの結果を踏まえ、ヒト可溶性T β Rll-lgGキメラ遺伝子を実際に導入し、心筋線維化・心筋肥大に及ぼす効果を検討する予定である。
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