洞房結節細胞のM2スカリン性受容体刺激は、ムスカリン性K^+(K_<ACh>)チャネルの活性化とアデニル酸シクラーゼの抑制を介して陰性変時作用を引き起こす。昨年度私は、K_<ACh>チャネルの特異的ブロッカー・テルティアビン(Ter)を用いて、βアドレナリン性受容体刺激非存在下でのムスカリン性アゴニストによる陰性変時作用における両過程の機能的重要性を検討した。その結果、(1)ムスカリン性アゴニスト・カルバコール(CCh)は1nMから10μMの範囲で濃度依存性に陰性変時作用を引き起こすこと、(2)このうちTer感受性分画は30nMから1μMのCChで誘発され、CChの最大効果の約70%を担うこと、(3)Ter非感受性分画は1nMから100nMのCChで誘発され、CChの最大効果の約30%を担うことを見い出した。そこで今年度は、β受容体刺激下に同様の実験を行ない、上記2過程がどのようにCChの陰性変時作用を仲介するかを検討した。β受容体アゴニスト・イソプロテレノール(100nM)存在下で、CChは1nMから10μMの範囲で濃度依存性に心拍数を低下させた。Ter(300nM)は、10nMより高濃度のCChの効果を部分的に阻害した。この結果から、CChはTer感受性分画を10nMから1μMの範囲で、Ter非感受性分画を1nMから10μMの範囲で濃度依存性に誘発することが解った。両分画の最大反応は、ほぼ同等であった。即ちムスカリン性受容体刺激は、β受容体刺激時には非刺激時より(1)アデニル酸シクラーゼの抑制に強く依存して陰性変時作用を引き起こすこと、(2)逆にK_<ACh>チャネルの役割は、β受容体刺激時には非刺激時より相対的に減少することが解った。
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