心筋症ハムスターにおける心筋症の発症機序をさらに検討するため、δ-SG欠損細胞として心筋症ハムスター骨格筋細胞(BIO14.6myotube)を用いて筋細胞壊死の原因となるイオン代謝異常の有無を検討した。BIO14.6myotubeにおいて、Ca透過性でストレッチ感受性、低濃度ガドリニウムで阻害される非特異的カチオンチャネルが無刺激時においても活性化状態にあり正常な細胞に比べて開口率が約4倍増大していることが判明した。 ^<45>Ca^<2+>流入を測定したところ、非刺激状態でのBIO14.6myotubeでは、コントロールmyotubeの約1.8倍^<45>Ca^<2+>流入量が増加していた。また、BIO14.6myotubeでは、外液Ca^<2+>濃度0.5-2mM存在下でコントロールmyotubeで観察されない筋細胞内Ca濃度のオシレーションが観察された。BIO14.6myotubeへの^<45>Ca^<2+>流入は細胞のストレッチ刺激でさらに増加した。一方、細胞にストレッチ刺激(5-20% cyclic stretch)を1時間施行すると、BIO14.6myotubeでは細胞内蛋白質クレアチンキナーゼ(CK)の流出が観察された。CK遊離は、ガドリニウム、ルテニウムレッドなどCa^<2+>流入を阻害する薬物添加により抑制された。細胞内Ca^<2+>代謝に関与すると考えられる膜イオン輸送蛋白質の含量はコントロール及びBIO14.6myotubeで差はなかった。これらのCa^<2+>代謝及び膜系の異常はアデノウィルスベクターを用いてδ-SG遺伝子をBIO14.6myotubeへ導入することによりほぼ消失した。 これらの結果から、ストレッチによるCa^<2+>流入の増大が筋細胞壊死に密接に関わっている可能性が示唆された。現在このチャネルの同定が進行中である。
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