過去2年間の研究から、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)患者から採取した長期保存髄液(最長10年)を使用し、RT-PCR法により、SSPE virusの存在を確認する方法を確立することができた。今年度は最終目的である、SSPE virusで選択的遺伝子変異(biased hypermutation)がもっとも起こりやすいとされる、M蛋白領域の遺伝子を増幅し、その塩基配列を求めた。しかし、オートシークエンサーで求めた、塩基配列は、種々の塩基が混在するパターンで、特定のピークを識別することができなかった。PCR産物をゲルから切り出し生成しても、あるいは精製キットを使用しても同様で、sequence primerを変更しても改善を得ることができなかった。原因として、保存髄液中でSSPE virusに不規則な変位が生じてしまっている事などが考えられた。残念ながら、研究期間中に結論を出すことができず、論文発表には至らなかった。しかし、本研究は重要な内容を含んでおり、引き続き研究を継続する予定である。 なお、学童期にSSPEの鑑別疾患となる若年型Alexander病を疑われる症例を経験し、遺伝子診断を行い、SSPEではなくAlexander病であると確定診断した。これまでにない遺伝子変異の発見であり、結果は論文として発表した。
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