研究概要 |
身長発育は極めて遺伝的に規定され、その約60%は長管骨の内軟骨骨化によりなされる。PTH/PTHrP受容体(PTHR1)は内軟骨骨化の重要な調節因子の1つである副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)(軟骨細胞の増殖促進、分化抑制に作用)のシグナルを伝達する。PTHR1遺伝子P3プロモーターAAAG反復配列多型のin vitroの系における機能解析により、ヒト正常集団(日本人および白人)に見出される3,5,6,7,8回の反復多型のうち6回反復多型はプロモーター活性が最も低い。受容体発現量が少ないと考えられるこの6回反復を有する群は、最終身長に達した若年成人および中学生女子において有意に高身長であり、このプロモーター多型は生理的身長発育の個体差を規定する因子の1つであると考えられる。下肢長を用いた上節/下節比を中学生男女で検討したが、体型に及ぼす影響は認めなかった。PTHR1の細胞内シグナル伝達にはGsα蛋白が介在している。Gsα蛋白の変異により低身長をともなう偽性副甲状腺機能低下症Ia型を生じる。Gsα遣伝子発現量に影響すると考えられる転写調節域のメチル化の解析をおこなったが、低身長を伴わないIb型でメチル化パターンの異常を見出したが、低身長を伴うIa型では異常はなく、このメチル化異常によっては骨成長の異常はきたさないことが明らかになった。また、日本人の体格向上を踏まえ、3年間の連続計測を含む検討により下肢長および下肢長を用いた上節/下節比による体型評価のための新しい標準値を設定した。この標準値は小児の成長に関連する疾患を評価する上で有用である。PTHR1プロモーター多型の検討で最大骨密度を有する対象では骨密度に差は認めなかったが、骨吸収マーカーが6回反復の群において低値であり、加齢に伴う骨密度減少速度に関連する可能性があり今後の検討課題である。
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