研究概要 |
本研究は、ALL細胞の性質を解析することにより、難治性のALLの診断精度の向上と、新しい治療法の開発を目的としいている。ヒトのB前駆細胞型ALL細胞は、骨髄ストローマと共培養することによりin vitroにおいて分化・増殖させることは可能なことが示されているが、T細胞型ALL(T-ALL)をin vitroで培養することは、非常に困難と考えられている。最近、当研究室において、ヒトの骨髄の未分化な造血幹細胞を、NOD/SCIDマウスの胎仔胸腺とともに器官培養(FTOC:fetal thymus organ culture)すると、未熟なT細胞が分化・増殖することが示された(Ishii T,et al.J Immunol,1999)。今回同様の系を用いて、ヒトのT-ALL細胞をin vitroにおいて培養することができるかどうかを検討した。初診時のヒトのT-ALL細胞(多くは凍結検体)をNOD/SCIDマウス胎仔から得られた胸腺とともに培養したところ、7例全例において4週後にT-ALL細胞の増殖がみられた。これらの細胞は、培養開始時と同一のクロナリテイーを有した。また得られた細胞を再びFTOCに入れたところ、さらに増殖がみられたが、FTOCを用いずに液体培養したところ、生存する細胞は得られなかった。さらに、FTOC後の細胞を、放射線照射NOD/SCIDマウスに移植したところ、4-6ヶ月後にヒトのT-ALLを発症した。T-ALL細胞のうち、IL-7レセプター陰性のものは陽性のものに比較して増殖力が旺盛であった。また、T-ALL細胞の集団の中にIL-7レセプター陰性から陽性に分化する経路が存在することが示唆された。以上より、FTOCを用いることにより、ヒトの正常未熟T細胞と同様に、ヒトT-ALL細胞のin vitroにおける分化・増殖の再現が可能であることが示された。
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