本研究はALL細胞の性質を解析することにより、難治性のALLの診断精度の向上と、新しい治療法の開発を目的としいている。我々はまず、フローサトメトリー(FCM)を用いてB前駆細胞型白血病細胞(BCP-ALL)のテロメア長を測定することを試みた。テロメアには特有のDNA繰り返し配列があり、これに対して相補的なオリゴヌクレオチドから成るプローブを作成し、蛍光色素(FITC)で標識した。これを白血病細胞内でテロメアとハイブリダイズさせ、FCMを用いてテロメア長を測定した。この方法の利点は、他の蛍光色素(Cy5等)で標識されたモノクローナル抗体を用いることにより、細胞表面抗原とテロメア長を同時に検出することができることである。予備的実験において至適条件を設定した。現在、白血病細胞と、ヒトの正常B前駆細胞におけるテロメア長を測定し、データを集積しているところである。次に正常B前駆細胞には発現がみられないがBCP-ALL細胞には特異的に発現している可能性のあるCD58について検討した。初診時のBCP-ALLの16例全例でCD58は陽性だった。現在正常B前駆細胞におけるCD58の発現を調べている。最後に、昨年から行っていた、T細胞型ALL(T-ALL)をNOD/SCIDマウスの胎仔胸腺とともに器官培養(FTOC)する系は再現性よく確立された。これはヒトのT-ALL細胞のin vitroにおける培養系としては初めて報告されるものである。初診時のヒトのT-ALL細胞をこの系を用いて培養したところ、7例全例において4週後にT-ALL細胞の増殖がみられた。T-ALL細胞のうち、IL-7レセプター陰性のものは陽性のものに比較して増殖力が旺盛であった。現在、この系を用いてT細胞型ALL細胞の増殖に影響を与えるサイトカインや薬剤を発見するべく計画を立てているところである。
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