研究概要 |
急性巨核芽球性白血病患者の末梢血芽球から特異な性質を持つ増殖因子依存性細胞株YMP91を樹立した(投稿準備中)。YMP91の増殖は、IL-6ファミリー受容体の共通刺激伝達要素であるgp130および受容体型チロシンキナーゼc-kitの両者からの刺激に依存している。 親株YMP91から限界希釈法にて4種の亜株を樹立し、増殖の速い順にYMP91-A,-B,-C,-Dと名付けた。これらの株細胞はいづれもCD41強陽性である。YMP91-Aは芽球形態を保ったまま倍加時間約24時間で増殖し、電顕的にもPPO陰性である。一方、YMP91-C,-Dは多核の巨大な細胞への分化が盛んで細胞数としての増加は緩徐である。YMP91-Bは中間的な性格を持つ亜株である。YMP91-AあるいはYMP91-CをEPO単独存在下に培養すると、その増殖(細胞数の増加)はSCF+IL-6/sIL-6Rにやや劣るものの、大型あるいは巨核の細胞が増加し、PPOの陽性率が著明に増加する。 巨核球のendomitosisとcytokinesisを調節している細胞内因子をレトロウイルスベクターを用いた発現クローニング法にて同定すべく実験を進めている。すなわち、未分化な状態で増殖している系(たとえばYMP91-AをSCF+IL-6/sIL-6R存在下に培養したもの)と巨核化し分化していく系(分化傾向の強い亜株YMP91-C、あるいはYMP91-AをEPOで培養したもの)から、それぞれmRNAを抽出しレトロウイルスベクターにてcDNAライブラリーを作成し、相互にライブラリーのレトロウイルスを感染させることにより期待される表現形が新たに出現する、あるいは消失するクローンからベクタープライマーを用いて目的とする遺伝子を単離・同定を試みている。
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