研究概要 |
多くの炎症性疾患の病理学的背景にはリンパ球を中心とした免疫反応以外に顆粒球細胞・単球の機能亢進とそれによる組織傷害が深く関与していることが明らかにされてきた.これら炎症担当細胞は機能を営んだのち,速やかに消滅する(アポトーシス)がこのことは炎症の終息のうえで重要な生体反応である.逆に言えば速やかなアポトーシスの誘導が,炎症の終息に重要な生体反応であろう.本研究では,生体における組織障害のメカニズム,とくに顆粒球の生物活性蛋白・活性酸素・細胞外マトリックスの産生とその制御に注目するとともに,炎症担当細胞のアポトーシスとの関連性を,分子生物学的手法を使用して明らかにし,病態に応じた組織傷害や炎症の慢性化に対する予防法ならびに治療法を理論的に確立することを目的とした. 研究の結果,とくに気管支喘息治療薬であるテオフィリンの顆粒球アポトーシス・機能に与える影響において,テオフィリンのphosphodiesterase inhibitor以外の機序による顆粒球アポトーシス誘導作用・機能修飾作用を見い出した.好酸球においてはPDE inhibitionにより細胞内cAMPが上昇し,Bc1-2の発現が抑制されmRNAまたは蛋白合成レベルが抑えられる機序が推察されたが,好中球のアポトーシスにおいてはアデノシン-アンタゴニスチックな作用が働いており,細胞により抑制機序の差異が観察された。これらの結果はテオフィリンの抗炎症薬的側面を実証し,喘息治療における同薬剤の使用妥当性を支持するものである.また好中球の細胞寿命延長に関連した酵素活性としてPI3Kの関与を証明し,GM-CSFとの関連を示した.
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