研究概要 |
本年度はBLM、ATMの機能について以下のことを明らかにした。 1)BLMの機能解析 Bloom症候群(BS)は成長障害、日光過敏性紅斑、免疫不全を特徴とする。病因遺伝子BLMはhelicase機能を有することが明らかになったが、BSに成長障害、免疫不全がおきる原因は不明な点が多い。BLMの欠損がin vivo,in vitroの細胞の増殖におよぼす影響を検討した。BSおよび健常人由来のEBV-transformed細胞株または末梢単核球(PBMCs)を用いた。BS由来の細胞株はコントロールに比較し増殖がゆるやかであった。さらに、放射線照射後の生存率も低下していた。BS由来PBMCではp53タンパクの誘導が放射線照射前から亢進しており、細胞周期の調節異常が考えられた。BLMを欠損させたマウスでは胎生12日の時点でcontrolに比較し身長は約2/3体重は1/3と明らかに小柄であった。胎児肝細胞は約1/100に減少していた。神経管周囲には細胞死を示す細胞の増加がみられた。以上より、BLMの欠損ではDNAの複製が障害され細胞の増殖障害がおこり、またDNAのbreakに対して修復できず細胞死がおこりやすいことがBSの成長障害、免疫不全の病態を形成していると考えられた。 2)A-Tの患者スクリーニング A-Tの病因遺伝子ATMは全長が9kbと比較的大きな遺伝子であり、遺伝子診断は労力を要する。ATMタンパクがマイトジェン刺激したリンパ球に誘導されることを応用してタンパク発現の有無で患者スクリーニングをできる系を確立した。
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