研究概要 |
3β-hydroxysteroid dehydrogenase II(3βHSD II)は、副腎皮質、性腺で特異的に発現し、ステロイド産生における重要な酵素である。この酵素の基礎的な転写調節機序(特に副腎皮質網状層細胞における抑制機序)につき次の知見を得た。 1)3βHSD IIの5'flanking regionの構築を行った。逆行性-1182〜+34 PGL3 plasmidのNCI-H295Rにおける転写活性は、Cyclic AMP, TPA刺激においても変化が見られなかった。この結果が、逆行性に組み込まれたためか、Ad4BP consensus binding elementがこの領域に存在することより抑制的な調節が作用したと考えられた。このため順行性に組み込むことを目的として、TA PCR II vectorを介したり、制限酵素認識部位を付加したPCR産物でPGL3に組み込みを試みたが、目的のplasmidは得られなかった。このため新たな領域(-1019〜+203)に制限酵素認識部位を付加したPCRを作製し、順行性にPGL3 vectorに組み込んだplasmidを得た。このplasmidから制限酵素を用いて領域を絞り込んだplasmidを作製した。現在これらのplasmidを用いて転写活性の再検討を行っている。 2)NCI-H295Rを用いてステロイド代謝酵素の活性調節因子の基礎検討を行った。IGF-Iによりコルチゾール産生は上昇し、CYP17,3βHSDII, YP21mRNAとproto-oncogeneであるc-fos, JunBmRNAは高まった。Phophatidylinositol 3-kinase inhibitorであるLY294002 and WortmanninはIGF-Iにより刺激されたこれらのCYP17,3βHSDII, CYP21、c-fos, JunBmRNAを抑制した。一方,MEK inhibitorであるPD98059はこれらの遺伝子発現に変化を及ぼさなかった。従って、IGF-IによるNCI-H295R cellsにおけるステロイド産生刺激はPI-3K pathwayによるものと考えられた。
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