ウイルス性脳炎・脳症の病態に関して平成13年度以下のことを明らかにした。 1.平成12年〜13年、東海地区で流行したエンテロウイルス71による脳炎について疫学調査を行い、臨床像・病態について明らかにした。本症においては、ウイルスが中枢神経内で増殖し、神経症状を起こす一方、死因としては急性肺水腫(呼吸器ではウイルスの増殖は認めない)が主な病態であった。 2.単純ヘルペスウイルス(HSV)による新生児ヘルペス(中枢神経型)における血中及び髄液中のウイルス量を測定し、HSV2型による場合、ウイルス量が多く、また抗ウイルス療法に抵抗し、予後も悪く、またしばしば再発することが明らかになった。 3.インフルエンザ脳症の病態として、血管内皮細胞の障害が起きていることをEセレクチンの血中濃度から明らかにした。この血管内皮の障害は予後と密接な関連が認められた。サイトカインの中では、sTNFRc-1とIL-6が増加しており、特にsTNFRc-1とEセレクチンの血中濃度の間に高い相関関係を認めた。これらから、sTNFRc-1が血管内皮細胞に障害性に働き、Eセレクチンが上昇すると推定された。 4.HHV-6がインフルエンザ脳症の発症に関与しているとの報告がみられたが、検討の結果、血液中及び髄液中にHHV-6DNAは検出されず、同ウイルスのインフルエンザ脳症への関与の可能性は低いと考えられた。 以上、ウイルスが中枢神経内で増殖するウイルス性脳炎と、増殖は認められず間接的に神経障害を惹起するウイルス性脳症について新しい知見を得た。 引き続き、平成14年度も検討を続け、病態の解明を通じて、治療法及び予防法の確立を目指したい。
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