1.ICR系妊娠マウスにビスダイアミン200mgを妊娠7.5日に投与し、胎生8.5〜13.5日の胎仔の中枢神経系におけるPAX3のm-RMA発現をRT-PCR法を用いて対照マウスと比較した。対照群では、PAX3は胎生8.5日より発現し11.5日に最高となって13.5日にかけて減弱した。ビスダイアミン投与マウスでも同様な発現パターンを呈して対照マウス胎仔と差を認めなかった。 2.中枢神経系の発生に重要である転写因子の発現をビスダイアミン投与マウスで検討した。Wnt-3、AP-2およびEMX-1についてRT-PCR法を用いて発現パターンを検討したところ、EMX-1でビスダイアミン投与により胎生10.5日および11.5日において発現が減弱していた。Wmt-3およびAP-2ではビスダイアミン投与による発現パターンの変化は認められなかった。 3.Sox4はSry-box familyの転写因子で、心臓ではマウスにおいて流出路と房室間の心内膜床に限局して発現し、そのknock outでは半月弁の異常や漏斗部心室中隔欠損、総動脈幹遺残が認められる。Sox4発現のビスダイアミンによる影響をRT-PCR法を用いて検討したところ、中枢神経系および心臓の両者においてビスダイアミン投与によりSox4の発現は減弱した。 以上の結果より、ビスダイアミンは中枢神経系の発生に関与して神経堤細胞の心臓への移動に影響し円錐動脈幹奇形を誘発することが遺伝子レベルでも明らかとなった。PAX3の関連については今回の研究では明らかにできなかった。また、Sox4は神経堤細胞の心臓への移動と動脈幹における血管平滑筋への分化に関与している可能性が示唆された。
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