【目的】本研究は自閉症遺伝的背景となる遺伝子群を解明しDNAチップへ応用することである。本疾患は、インプリンティング遺伝子が関連すると想定されている。そこで、本年度はセロトニン受容体遺伝子の中のインプリンティングを検索した。【方法】ヒト染色体を1本のみ保持するマウスA9細胞ライブラリー(鳥取大学細胞工学教室、押村教授より)を用いた。5-hydroxytryptamine receptor 1D(HTR1D)(染色体の領域lq36.3-q34.3)、HTR1D(染色体の領域5q11.2-q13)、HTR1B(染色体の領域6q13)、HTR1E(染色体の領域6q14-q15)、HTR5A(染色体の領域7q36.1)、HTR3A(染色体の領域11q23.1-q23.2)、HTR2A(染色体の領域13q14-21)遺伝子が存在するクローンを用いた。【結果】RT-PCR法にて目的の遺伝子発現を検討した。HTR1A、HTR1E、HTR2A遺伝子は発現が低くPCR産物の検出にSyberGreenが必要であった。今回の検討では、すべての遺伝子は父方由来、母方由来の両クローンで発現を認め、インプリンティングを示唆する結果は得られなかった。HTR2A遺伝子では脳でのインプリンティングを示唆する報告があり、さらに検討が必要と考えられた。【結論】7種輝のセロトニン受容体遺伝子のインプリンティングを検討した。ヒト染色体を1本のみ保持するマウスA9細胞を用いて検討した結果、いずれの遺伝子もインプリンティングは示さなかった。自閉症にはインプリンティング遺伝子が関連する可能性があり、今後さらに検討が必要と考えられた。
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