本研究は、小児の行動異常の代表的な疾患である自閉症の遺伝的背景を解明し、DNAチップなどの診断法を開発することを目的として行われた。1)自閉症は脳内伝達物質であるセロトニンなどの異常の報告があること、2)脳形成に関連する遺伝子が精神障害に関連する可能性があること、3)自閉症はゲノムインプリンティング遺伝子と関連している報告があること、4)結節性硬化症など自閉を示す単一遺伝病の研究も重要、5)多くの遺伝子が関連するため関連遺伝子解析などの解析方法を確立しておく必要ある、との背景から研究を進めた。 (結論) 1.セロトニン関連遺伝子の一つであるHTR1Aが自閉症に関連する可能性が示された。 2.自閉症の一部に特徴的なHOX1A遺伝子の多型が確認された。 3.インプリンティング遺伝子を単離する独自の方法を確立した。 4.セロトニン関連遺伝子にはインプリンティング遺伝子は見出せなかった。 5.結節性硬化症の遺伝子異常を明らかにした。 6.Single nucleotide polymorphismの解析やCompetitive PCRを用いた遺伝子発現測定の方法を確立した。 (今後の課題) 1.さらに多くの患者家族の検体で、今回の結論を検証する必要がある。 2.自閉症と関連するゲノムインプリンティング遺伝子を解明するために、脳に特異的なインプリンティング遺伝子を解析するシステムを構築する必要がある。 3.関連が示される遺伝子の機能の研究を進める。 これらの課題を克服することにより、DNAチップなどを用いた診断法を臨床に応用し、さらに新しい治療薬の開発に結びつけることが可能になる。
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