難治性小児癌に対する樹状細胞を用いた自家末梢血幹細胞移植後の免疫療法に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670755
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 渡邉 力 徳島大学, 医学部, 助手 (70314862)
• 研究分担者: 河野 嘉文 徳島大学, 医学部・附属病院, 講師 (20260680) ; 黒田 泰弘 徳島大学, 医学部, 教授 (20035471)
• キーワード: 末梢血幹細胞移植 / 樹状細胞 / 免疫療法 / 小児がん

研究概要

1)末梢血幹細胞からの樹状細胞の誘導
悪性腫瘍患児から末梢血幹細胞を採取し、CD34陽性細胞分画とCD34陰性細胞分画に分離し、凍結した。凍結したCD34陽性細胞分画とCD34陰性細胞分画(分画中の単球)の両方から、GM-CSFとIL-4、、あるいはTNF-αなどのサイトカインを加えて培養することにより、抗原提示機能を持った樹状細胞が得られることが判明した。しかし、CD34陽性細胞分画から得られる樹状細胞の実数は少なく臨床応用には困難と思われた(CD34陽性細胞分画は移植後の造血再構築に用いるため希少であるため)。CD34陰性細胞分画中には単球が豊富にあり、数的にも十分な樹状細胞をこれらの単球から得ることが可能であることが判明したが、単球から分離した樹状細胞がどのような性状をもつかは今後の検討が必要である。臨床的には凍結CD34陰性分画細胞を用いて、抗腫瘍効果の得られた症例を経験した。再発フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病男児に再寛解導入療法と凍結していたドナーCD34陰性分画細胞(CD3約40%)により治療し、寛解を得た。地固め療法として同様の化学療法と再度ドナーCD34陰性分画細胞球輸注を行い、急性GVHDの合併はあったが、すぐれた抗腫瘍効果が得られた。CD34陰性分画細胞が何らかの免疫効果を有していたものと考えられ、凍結細胞からも免疫効果のある細胞が得られることが判明した。
2)臍帯血からの樹状細胞の誘導
臍帯血単球およびCD34陽性細胞からも上記と同様の方法で樹状細胞が分離可能であった。同種免疫療法として臍帯血の利用の可能性があることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Kawano Y,Miyazaki T,Watanabe T, et al.: "Failed prophylaxis with r-globulin, ganciclovir, and acyclovir to prevent the central nervous system locally reactivated human herpesvirus-6 after allogneic blood CD34+cell transplantation."Bone Marrow Transplantion. 25巻. 787-790 (2000)
• [文献書誌] Watanabe T,Kajiume T,Abe T, et al.: "Allogeneic peripheral blood stem cell transplantation in children with hematological malignancies from HLA-matched siblings."Medical and Pediatric Oncology. 34巻. 171-176 (2000)
• [文献書誌] Kanamaru S,Kawano Y,Watanabe T, et al.: "Low numbers of megakaryocyte progenitors in grafts of cord blood cells may result in delayed platelet recovery after cord blood cell transplant."Stem cells. 18巻. 190-195 (2000)
• [文献書誌] Watanabe T,Mineishi S,Kawano Y, et al.: "Partially matched transplants with allogeneic CD34+blood cells."Leukemia & Lymphoma. 37巻. 487-496 (2000)
• [文献書誌] 渡辺力,河野嘉文,渡辺新,高上洋一: "末梢血幹細胞移植術;小児がん"医薬ジャーナル社. 731 (2000)