研究概要 |
腎炎進行に関わる糸球体メサンギウム細胞(MC)の動態・機能を制御するために、細胞外基質(ECM)結合によりβ1-インテグリン(IG)ファミリーから発生するMC内シグナル伝達機構(MAPキナーゼファミリー経路)を分析し、分子生化学的に腎炎進行機序の解明を行った。 1.培養MCが発現するβ1-IGファミリーを介した細胞内MAPキナーゼ(MAPK)ファミリー経路の解析 Cell proliferation assay, Adhesion assay, Migration assay, Cllagen gel contraction assayにより、糸球体MCのα1β1IGより発生するERK-AP-1経路が進行性腎炎に見られるECMの異常リモデリング反応に重要であることが判明した。また、この反応は、IG機能阻害抗α1β1IG抗体、ERK阻害剤、ドミナントネガティブAP-1cDNAベクター(TAM67)投与により抑制された。 2.MAPK経路阻害ドミナントネガティブcDNAベクターやシグナル伝達阻害剤投与によるラット実験腎炎の細胞内MAPK経路の阻害と腎炎抑制効果の検討 ラット抗Thy-1腎炎は進行性腎炎に見られるECMの異常リモデリング像を呈する腎炎モデルである。この腎炎を用いてα1β1IGより発生するMAPKジグナル伝達の阻害を試みた。α1β1IG機能阻害抗体を左腎動脈より投与したところ、腎炎に見られる細胞増殖や異常ECMリモデリングが改善した。今後、ERK-AP-1経路を阻害する薬剤を開発しヒト腎炎の新たな治療法の確立を目指したい。
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