平成12年度の研究で、新しい免疫抑制剤FTY720が1型糖尿病の動物モデルであるNODマウスの糖尿病発症を抑制することを明らかにした。興味ある点は、FTY720の投与を膵島炎出現後の10週齢で開始しても、NODマウスの顕性糖尿病発症が完全に抑えられたことであった。これまでNODマウスの糖尿病発症を抑制する治療手段は数多く報告されてきたが、ほとんどが膵島炎出現前にinterventionを開始しないとその効果は得られなかった。上記成績に加えて、FTY720を糖尿病発症直後から投与すると、糖尿病マウスの生存期間(インスリン治療なし)が有意に延長した。これらの事実は、FTY720に強力な膵β細胞破壊抑制効果があることを示すとともに、その作用発現が極めて早い(速効性)ことを証明するものであった。 本年度(平成13年度)は、平成12年度から始めた膵の病理組織学的検討(膵島炎の重症度の評価)と免疫学的検討(末梢血、脾、腹腔リンパ節のリンパ球サブセットの検査)をさらに進めた。その結果は昨年度のpreliminaryな成績と大きく変わるところはなかったが、例数を増やして評価したことで信頼度が高まったと考える。結論としては、FTY720投与群ではコントロール群に比し末梢血、脾、腹腔リンパ節のTリンパ球が著しく減少していたが、膵島炎の頻度、程度については有意な差は見られなかった。膵島に浸潤しているリンパ球の種類が異なっている可能性が十分あり、今後浸潤リンパ球の解析を行う必要がある。
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