研究概要 |
ロイコトリエンC4(LTC4)の遺伝子異常がアスピリン喘息の発症に関与しているとの報告がなされている.しかしこれは人種差が指摘されており,日本人での報告は確実なものはない.LTC4は喘息を含めたアレルギー疾患の病態の発現に最も重要なメディエーターであると考えられており,その合成酵素の活性が遺伝子のレベルで規定されているということが事実であれば,これらの報告はきわめて重要な発見である.我々は小児アレルギー疾患の患者(喘息,アトピー性皮膚炎)をスクリーニングし,LTC4合成酵素(LTC4 synthase;LTC4syn)およびそのレセプター異常を遺伝子レベルで解明することを目的として研究を進めている.今年度はアレルギー疾患を有する小児群と正常コントロール群でLTCsynのプローモーター領域においてtranslation開始部位の-444base上流の多型(A-C transversion)の頻度を検討した.アレルギー疾患小児40人中C/C型(homo)は10%でA/C型(hetero)は60%であるのに対して,コントロール群ではC/C型(homo)は0%でA/C型(hetero)は27.3%であった.このことは,LTCsynのプローモーター領域における-444baseの多型がLTC4synの酵素活性に関与している可能性が日本人でも存在することを示唆するものであり,今後さらに詳しい検討が必要であることを示す. ところで,上記のごとく,LTC4活性の制御はアレルギー疾患の治療に有用であると考えられるため,我々はこの研究と並行してLTC4synの酵素活性に影響をおよぼす可能性のある薬物のスクリーニングをおこなっておいる.今年度はMagnololおよび(9-[4-acetyl-3-hydroxy-2-n-propylphenoxy)methyl]-3-(1H-tetrazol-5-yl)-4H-pyrido[1,2-a]pyrimidin-4-one)という2つの活性物質を見いだし,その機序とともに報告した.
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