研究概要 |
我々の最終目的はDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)を根治治療にある。アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療の欠点の1つとして、成熟筋細胞に感染が難しことがある。我々はアデノウイルスベクターをヘルパー細胞(293細胞)に感染させ、その細胞を直接筋注することにより、成熟筋細胞への感染を可能とした。その原因はヘルパー細胞より何らかの感染しやすくするファクターが出ているのではないかと考えた。平成12年度はin vitroでの実験を行ったが、そのファクターを証明することは出来なかった。平成13年度より、我々はこの現象にはCytoPathic Effect (CPE)の関与があると仮説を立て、実験を進めている。平成13年度はin vivoでCPE自体が関与することを強く示唆するデータを示した。本年度はCPE後、成熟筋細胞へ感染しやすくするファクターが放出されるかどうか検討した。AdlacZ(lacZを発現させることの出来るアデノウイルス)を25MOIで293細胞に感染させ、CPEを示した後、その培養したメディウムとAdluc(ルシフェレースを発現させることの出来るアデノウイルス)を混ぜて、成熟マウスの骨格筋へ筋注した。その後、その骨格筋を分離し、ルシフェレース活性を検討した。その結果、ルシフェレースの活性を確認した。このことより、やはり何か基底膜を壊す何かの因子が放出されていて、成熟筋細胞に感染が可能になったのだと考える。結論として、in vitroの実験でメディウムのみでは効果がなかったので、この現象にはCPEが起こること自体とその後放出する因子の両方が強く関わっていることが考えられる。(Kimura, S. et al. High efficiency gene transfer to skeletal muscle inadult mouse for Duchenne muscular dystrophy using adenovirus helper cells. J. Gene. Med. revise)
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