ヒト神経芽腫の平滑筋細胞への分化・成熟とその制御機構

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670763
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 杉本 徹 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (90117888)
• 研究分担者: 黒田 啓史 宮崎医科大学, 医学部, 講師 (10284837)
• キーワード: 神経芽腫 / 平滑筋細胞 / 分化・成熟 / 神経堤細胞

研究概要

鳥類の神経堤細胞は多分化能を持ち、大血管を含む外胚葉・中胚葉細胞に分化することが発生学的に分かっている(Le Douarin1980)。最近、哺乳類であるラットの神経堤細胞も平滑筋細胞に分化することが初めて明らかになった(Shah et al.Cell1996)。しかしヒト神経堤細胞生・分化とその制御機構は、ヒト胎児を用いた発生学的研究が不可能のために全く不明である。
一方、神経芽腫(Neuroblastoma以下NB)は神経堤より発生する小児悪性腫瘍である。1983年RossらはNB細胞株培養中に平坦・上皮様(S)細胞が出現すること、またS細胞は何らかの条件で神経(N)細胞と相互変換することを報告した。しかしS細胞の特性は不明である。
今回、我々は、14種のNB細胞株を用いて、平滑筋細胞に特異的な骨格蛋白(desmin、α-smooth muscle actin、塩基性calponin、平滑筋myosin heavy chainのSM1とSM2)が、S細胞に、存在することを、(1)蛍光抗体法、(2)Western blot法と(3)RT-PCR法で明らかにした(Sugimoto et al.Diagnos.Mol.Path.2000)。
ヒトNB細胞株に平滑筋と考えられる細胞成分が存在することをは、我々が見いだした新知見であり、ヒト神経堤細胞が平滑筋細胞に分化する可能性を示す。

研究成果

• [文献書誌] Sugimoto,T. et al:: "Malignant rhabdoid-tumor cell line showing neural and smooth-muscle-cell phenotypes."Int J Cancer. 82. 678-686 (1999)
• [文献書誌] Shikata,A.,Sugimoto,T. et al:: "Neuronal differentiation in human neuroblastoma cells by nerve growth factor following TrkA up-regulation by interferon-γ."Med Pediatr Oncol. 34. 394-401 (2000)
• [文献書誌] Sugimoto,T. et al:: "Neuroblastoma cell lines showing smooth muscle cell phenotypes."Diagn Mol Pathol. 9. 221-228 (2000)
• [文献書誌] 杉本徹: "ヒト神経芽腫の細胞分子生物学的特性と臨床との関係"京都府立医科大学雑誌. 109. 655-668 (2000)
• [文献書誌] Kuroda,H.,Sugimoto,T. et al:: "Signaling pathway of ciliary neurotrophic factor in neuroblastoma cell lines"Med Pediatr Oncol. 36. 118-121 (2001)
• [文献書誌] Sugimoto,T. et al:: "Signal transduction pathways through TRK-A and TRK-B receptors in human neuroblastoma cells."Jpn J Cancer Res. 92. 152-160 (2001)
• [文献書誌] 杉本徹: "神経芽腫 今日の治療指針2001"医学書院. 830-831 (2001)