【目的】神経冠細胞(NCC)は、末梢神経、Schwann細胞、色素細胞、外・中胚葉細胞に分化することがLe Douarinらの鳥類の研究で証明されている。またCATCH21症候群(大動脈血管転移、Fallot四症候などを合併)は、頭頸部NCCの遊走と分化異常により、心血管系の異常を起こると考えられている。また最近ラットのNCCは平滑筋細胞(SMC)に分化する可能性が報告された(Anderson 1999)。以上より、NCCから発生すると考えられる。今回、NB株の培養中に発生するS型細胞(平坦・上皮細胞)がSMCの特性を持つこと証明した。 【方法】NB細胞株は、紡錘形のN細胞から成る親株(n=3)とクローン株(n=1)、S細胞からなる親株(n=2)とクローン株(n=4)、およびSとN細胞からなるクローン株(n=1)の計11種を用いた。細胞骨格の解析はα-smooth muscle actin(α-SMA)、desmin、塩基性calponinとsmooth muscle-myosin heavy chain(SM-MHC)のSM1とSM2isoformなどのSMCの特異的な抗体を用いて、蛍光抗体法とWestern blot法で検討した。α-SMAはNolthemblot法、calponinとSM-MHCはRT-PCR法で検討した。またSMCを収縮させるEndothelin(ET)によるシグナル伝達は、抗チロシン燐酸抗体(pTyr)アガロースと反応させ、ERK-2抗体によるWestern blot法で検討した。 【結果】N細胞から成るNB株ではSMCに特異的な細胞骨格蛋白は陰性であった。S型細胞を含む親株とクローン株では、α-SMA(n=7)、desmin(n=2)、塩基性calponin(n=7)が陽性、またSM1はS型細胞株MP-N-TS(n=1)で陽性であった。塩基性calponinとSM1陽性はRT-PCR法でも確認できた。またSM2はMP-N-TS株で陽性であった。ET刺激によるERK-2のpTyr化によるシグナル伝達は、S型細胞株で強陽性であった。 【考案】NBのS型細胞は、1)SMCの表現型を持ち、2)ET刺激により、ERK-2を介するシグナル伝達を起こし、3)S型細胞はSMCの特性を持つと考えられ、4)ヒトNCCの発生・分化と器官(特に心臓)形成を解析するのに役立つと考えられる。
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