小児科領域で間質性肺炎はウイルス感染症の合併症や悪性疾患に対する抗癌剤及び放射線療法の副作用として比較的よく見られるが、ステロイドやガンマグロブリンを用いた治療には限りがあり、肺気腫・肺線維症の続発により長期的に不良な余後をたどりうる。間質性肺炎から肺線維症への進展にはオキシダントによる肺損傷やサイトカイン、成長因子を介した線維芽細胞の増殖が関わっている。本研究はアンチオキシダント酵素であるグルタチオンリダクターゼ(GR)遺伝子を培養細胞のミトコンドリアで過剰発現させ間質性肺を引き起こすダイコート(DQ)に対する抵抗性が得られるかどうか検証した。ヒトGR遺伝子にミトコンドリアターゲッティングシグナル(MTS)のcDNAを組み合わせ、独自に開発したdual selection vectorを用いChinese hamaster ovary(CHO)細胞に導入、GRをミトコンドリアで過剰発現する細胞を作製した。GR過剰発現細胞ではGSH/GSSG比がコントロールより高く、t-BuOOH暴露に対し抵抗性をしめした。細胞質のみでGRを過剰発現する細胞とミトコンドリアで過剰発現する細胞を比べると、後者がより強いオキシダント抵抗性を示し、オキシダントストレスによる細胞内GSH/GSSG比低下の回復も早かった。DQ暴露(0.1nM)に対し、GRを細胞質のみで過剰発現する細胞は48〜72時間で死滅したが、GRをミトコンドリアで過剰現する細胞は暴露72時間で半数が生き残り、96時間後に死滅、オキシダントに対しミトコンドリアでの防御の重要性が裏付けされた。DQ暴露ではGR過剰発現細胞も最終的には死滅し、DQのように活性酸素を産生させるタイプの薬剤対しては除去も重要であることが示唆された。
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