研究概要 |
カリシウイルス科に属するウイルスは1999年のICTVの新しい国際分類により4つの属に分類され、ヒトにおいてはNorwalk-like viruses属とSapporo-like viruses属の二つとなった。それぞれの代表ウイルス種はNorwalk virus(NV)とSapporo virus(SV)である。 遺伝学的に多様性に富むNVとSVの検出法としては、それぞれRT-PCR法およびnested PCR法があり、現時点で最も検出率が高いプライマーの組み合わせを選択し(Honma S,Microbiol Immunol,2000)、また新たに作成した(Honma S,J Med Virol,2001)。これらの検査法で、1976年から1995年までに札幌市の乳児院において発生した、非細菌性胃腸炎の集団発生36流行の病原ウイルスを検索すると、カリシウイルス科に属するNVおよびSVが17流行(47%)を占めた(Nakata S,J Infect Dis,2000;Honma S,J Med Virol,2001)。 1994年6月と1995年6月に発生したNV胃腸炎の2流行、1994年9月と1995年7月に発生したSV胃腸炎の2流行を対象に、集団発生例における両ウイルスによる胃腸炎の臨床的重症度を、客観的0-20 point scoring systemを用いて検討した。比較として1989年3月に発生したRotavirus(RV)胃腸炎の1流行を加えた。集団としてみると発症率(50〜76%)と発症者の下痢の頻度(94〜100%)は、原因ウイルスの種類に係わらず差は見られなかった。嘔吐はNVとRVに多く、発熱はRV次いでNVに多かった。重症度スコアーはSV胃腸炎で5.2、NV胃腸炎で7.9、RV胃腸炎で8.4と、NV胃腸炎は発熱を除いてRV胃腸炎と同程度であった。個々の症例で見ると大多数が軽症か中等症に属したが、重症例はRV胃腸炎に多く、次いでNV胃腸炎に多く見られ、SV胃腸炎では見られなかった。
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