小児期のヒトカリシウイルス胃腸炎の臨床的重症度に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12670766
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 中田 修二 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70155745)
• 研究分担者: 酒井 好幸 札幌医科大学, 医学部, 助手
• キーワード: カリシウイルス科 / Norwalk virus / Sapporo virus / RT-PCR / nested PCR / 臨床的重症度 / 集団発生例 / 散発例

研究概要

カリシウイルス科に属するウイルスは1999年の新しい国際分類により4つの属に分類され、ヒトにおいてはNorwalk-like viruses属とSapporo-like viruses属の二つとなった。それぞれの代表ウイルス種はNorwalk virus(NV)とSapporo virus(SV)である。
昨年度は、3才未満の乳幼児を養育する北海道立中央乳児院で発生した、NV胃腸炎およびSV胃腸炎の各2流行を対象に、集団発生例における両ウイルスによる胃腸炎の臨床的重症度を、0-20 point scoring systemを用いて客観的に検討した。比較としてRotavirus (RV)胃腸炎の1流行を加えた。その結果、RV胃腸炎がもっとも重症であった。NV胃腸炎は発熱症例は少ないがRV胃腸炎と同程度に重症であった。SV胃腸炎はすべての症状において軽症であった。
今年度は、急性胃腸炎のために入院を要した14才以下の小児95例を対象に原因ウイルスの検索を行った。45例(47%)からRVが、17例(18%)からNVが検出されたが、SVは1例からも検出されなかった。臨床情報の得られた60例(RV25例、NV11例、原因不明24例)について臨床的重症度を解析した。RV胃腸炎はNV胃腸炎や原因不明例と較べて、下痢と嘔吐の頻度が高かった。重症度スコアーはRV胃腸炎で13.2、NV胃腸炎で12.3、原因不明の胃腸炎で11.3と統計学的有意差はみられず、原因の如何にかかわらず重症と判定された。個々の患者における重症度スコアーを見ると、全体の93%が中等症以上で72%が重症以上であった。最重症例ではRVが56%から、NVが22%から検出された。
小児の急性胃腸炎の入院症例は、集団発生例と比較して客観的に重症と判定され、その主な原因ウイルスはRVで、次いでNVも主要な原因ウイルスであった。

研究成果

• [文献書誌] Nakata S: "Members of the family Caliciviridae (Norwalk virus and Sapporo virus) are the most prevalent cause of gastroenteritis outbreak among infants in Japan"J Infect Dis. 181. 2029-2032 (2000)
• [文献書誌] Honma S: "Evaluation of nine sets of PCR primers in the RNA dependent RNA polymerase region for detection and differentiation of members of the Family Caliciviruidae Norwalk virus and Sapporo virus"Microbiol Immunol. 44. 411-419 (2000)
• [文献書誌] Pang X-L: "Effect of rotavirus vaccine on Sapporo virus gastroenteritis in Finnish infants"Pediatr Infect Dis J. 20. 295-300 (2001)
• [文献書誌] Honma S: "Sensitive detection and differentiation of Sapporo virus, a member of the family Caliciviridae, by standard and booster nested Polymerase chain reaction"J Med Virol. 65. 413-417 (2001)
• [文献書誌] Sakai Y: "Clinical severity of Norwalk virus and Sapporo virus gastroenteritis in children in Hokkaido, Japan"Pediatr Infect Dis J. 20. 849-853 (2001)