カリシウイルス科に属するウイルスは国際分類により4つの属に分類され、ヒトにおいてはNorwalk-like viruses属とSapporo-like viruses属の二つとなった。それぞれの代表ウイルス種はNorwalk virus(NV)とSapporo virus(SV)である。 3才未満の乳幼児を養育する北海道立中央乳児院で発生した、NV胃腸炎およびSV胃腸炎の各2流行を対象に、集団発生例における両ウイルスによる胃腸炎の臨床的重症度を、0-20 point scoring systemを用いて客観的に検討した。比較としてRotavirus(RV)胃腸炎の1流行を加えた。その結果、RV胃腸炎がもっとも重症であった。NV胃腸炎は発熱症例は少ないがRV胃腸炎と同程度に重症であった。SV胃腸炎はすべての症状において軽症であった。 次に、急性胃腸炎のために入院を要した14才以下の小児95例を対象に原因ウイルスの検索を行った。45例(47%)からRVが、17例(18%)からNVが検出されたが、SVは1例からも検出されなかった。臨床情報の得られた60例(RV25例、NV11例、原因不明24例)について臨床的重症度を解析した。重症度スコアーはRV胃腸炎で13.2、NV胃腸炎で12.3、原因不明の胃腸炎で11.3と統計学的有意差はみられず、原因の如何にかかわらず重症と判定された。個々の患者における重症度スコアーを見ると、全体の93%が中等症以上で72%が重症以上であった。最重症例ではRVが56%から、NVが22%から検出された。入院症例は集団発生例と比較して客観的に重症と判定され、その主な原因ウイルスはRVで、次いでNVも羊要な原因ウイルスであった。 NVは小児の急性胃腸炎の原因として頻度的にも臨床的にも重要と考えられるが、SVは検出頻度は高いものの臨床的重症度はそれほど高くなかった。NV胃腸炎への対策の必要性が示唆された。
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