研究概要 |
本研究では、先天性心疾患における心肥大・心筋障害と心筋虚血の因果関係を明らかとするため、心肥大を伴う各種先天性心疾患における冠血流動態および冠血流予備能を血流速動態の面から検討した。 平成12年度においては、診断および病態評価のために心臓カテーテル検査を施行し、本研究に対して承諾のえられたチアノーゼ性心疾患16例(ファロー四徴症13例、大血管転位症1例、肺動脈閉鎖症1例、両大血管右室起始症1例)(年齢:4.0±3.8歳)を対象とした。心臓カテーテル検査終了後、0.018inch doppler guidewire Flowire【□!R】,Cardiometrics社製,USA)を左前下行枝(LAD)と右冠動脈(RCA)に挿入して、各血管での血流速波形を記録。ついで、ATP(1.0μg/kg)冠注負荷による冠血流予備能を検討した。その結果、LADでは16例中5例(31%)で、RCAでは16例中8例(50%)で収縮期における明らかな逆流シグナルが見られた。拡張期収縮期の血流速比から血流プロファイルをみたところ、5歳以下の例ではRCAでは12例中8例(67%)、LADでは12例中7例(58%)に異常が見られたが、6歳以上の例での異常出現率はRCAで4例中3例(75%)と同様に高かったものの、LADでは4例中1例(25%)にすぎなかった。次に、5歳以下の例ではRCAで12例中9例(75%)、LADで8例(67%)に冠血流予備能の低下がみられたのに対して、6歳以上の例ではLADで4例中2例(50%)に低下がみられたものの術後の3例ではRCAでは正常であった。 以上の通り、心筋肥大を呈する先天性心疾患では、逆流血流の出現、拡張期と収縮期での冠血流プロファイルの異常、および冠血流予備能の低下、などがみられ、冠血管床での微小循環障害の存在が示された。また、術後の症例では冠予備能の改善がみられ、早期の外科手術による負荷軽減が冠循環の改善にも効果的であることが示唆された。平成13年度では症例を重ねて年齢および術前後での推移を含めて更に検討を続けていく予定である。
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