研究概要 |
我々は心ループ形成およびその異常により発症する先天性心奇形のメカニズムを明らかにする目的で、共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)を用いて鶏胚心の筋原線維形成の3次元的観察を行ってきた。その結果、1.隣合う心筋細胞の筋原線維は形成初期より連なり、深層の心筋細胞では筋原線維が心臓管の円周方向に配列する、2.この筋原線維の配列には、catenine, focal adhesion kinase, pacillinのtyrosine残基のリン酸化により制御される細胞-細胞間、細胞-基質間接着のdynamicな変化により形成される、以上を報告してきた。最近低分子G蛋白質(Rho)が非筋細胞でactin細胞骨格系を、平滑筋細胞でmyosin軽鎖のリン酸化を制御することが明らかになってきたが、細胞骨格および細胞接著が劇的に変化する発生過程の心筋細胞でのRhoの機能は明らかではない。今回我々は心ループ形成期のマウス胚心筋細胞でのRhoの発現をCLSMを用いて3次元的に観察した。胎生7.5-11.5日のマウス胚を抗RhoA、RhoB、alpha-actinin抗体とphalloidinで2重染色を行い、CLSMにてwhole-mount観察した。全経過を通じRhoA、RhoBは細胞膜に隣接して点状に発現し、RhoAは核小体にも発現した。RhoA、RhoBは8.5日以降にみられる未熟な筋原線維のZ-bandに一致して発現し、RhoAでより明らかであった。発生の進行および筋原線維の成熟に伴って、一部の筋原線維ではRhoはM-band上にtranslocateするのが確認された。CLSMにより、発生過程の,心筋筋原線維にRhoが局在することが明らかになった。Rhoが未熟な筋原線維のz-band上に認められたことは、Rhoが筋原線維の初期の形成、配列に関連する可能性が示唆された。過程に重要な役割と果たすと考えられた。
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