各種哺乳動物の血液凝固能の検討を行った。サル、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、マウス、シャチから得たクエン酸加血漿のプロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定したところ、ヒトに比しイヌおよびネコはPTおよびAPTTとも著明に短縮しており、ウシはPTおよびAPTTとも延長していた。サル、マウス、シャチのPTはヒトとほぼ同等であったが、APTTはサルおよびマウスで軽度短縮し、シャチでは著明に延長していた。以上から、外因系凝固能はヒトに比しイヌおよびネコで亢進し、サル、マウス、シャチではヒトと同等、ウシでは低下していることが判明した。一方、内因系凝固能はヒトに比しイヌおよびネコで著明に亢進し、サルおよびマウスでは軽度亢進、ウシおよびシャチではヒトに比し著明に低下していることが明らかとなった。次に各種哺乳動物の血漿中の各凝固因子活性を測定した。ヒト第VIII因子欠乏血漿を用いた凝固一段法では第VIII因子凝固活性はヒトに比して1.5〜20倍といずれも高値を呈した。また合成発色基質を用いた第VIII因子の活性型第X因子生成能も2〜15倍と同様に高値を呈した。以下、プロトロンビンは0.4〜1.3倍、第V因子は1.4〜12倍、第VII因子は0.13〜9倍、第IX因子は0.35〜3.2倍、第X因子は0.8〜3.8倍、第XI因子は0.3〜16倍、第XII因子は1〜2.2倍(シャチのみ活性は検出されず)であった。これらの結果を踏まえ、認識エピトープの明らかな抗ヒト第VIII因子モノクローナル抗体および同種抗体を用いて各種哺乳動物における第VIII因子の抗原性について比較検討する予定である。
|