研究概要 |
各種哺乳動物における抗ヒト第VIII因子インヒビター活性の交叉反応性を測定し、第VIII因子の抗原構造の比較検討を行った。使用した抗ヒト第VIII因子モノクローナル抗体のうち、C5はH鎖A1ドメインのアミノ酸351から365を、RFF/8はH鎖A2ドメインを、NMC-VIII/9はL鎖A3ドメインのアミノ酸1675から1684を、NMC-VIII/6はL鎖C2ドメインのアミノ酸2170から2327を認識し、いずれもヒト第VIII因子活性に対するインヒビター作用を有していた。交叉反応性はヒトのインヒビター力価に対する各種動物のインヒビター力価の比を%で表した。C5の交叉反応牲はサルで7.0%、イヌで2.7%、ネコで16.2%であり、ブタ、ウシ、マウス、シャチではいずれも0%であった。RFF/8の交叉反応性はサルで1.3%であったが、それ以外の動物ではいずれもほぼ0%であった。NMC VIII/9ではいずれの動物でも交叉反応性を認めなかった。NMC-VIII/6の交叉反応性はサル、イヌ,ネコ、ブタの4種で認められ、それぞれサルで54.5%、イヌで130%、ネコで82.8%、ブタで13.4%であり、ウシ、マウス、シャチではいずれも0%であった。以上から、最も多くの動物でしかも比較的高い交叉反応性が認められたのはC2ドメインを認識するNMC-VIII/6であった。このことは、C2ドメインの立体的なエピトープ構造がサル、イヌ、ネコ、ブタにおいてある程度ヒトに近いものであることを示唆するものである。今回の検討結果から、第VIII因子L鎖C2ドメインの構造が種を超えて保持されていることが予想され、C2ドメインが第VIII因子の機能上、非常に重要な領域であることが示唆された。
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