各種哺乳動物における血液凝固能の検討では外因系凝固能はヒトに比しイヌおよびネコで亢進し、サル、マウス、シャチではヒトと同等、ウシでは低下していた。内因系凝固能はヒトに比しイヌおよびネコで著明に亢進し、サルおよびマウスでは軽度亢進、ウシおよびシャチでは著明に低下していた。各種哺乳働物のヒトに対する第VIII因子比活性はサル、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、シャチでそれぞれ、1.5、10.0、20.0、4.5、3.8、5.0とサル以外はいずれも高値であった。次に、抗ヒト第VIII因子モノクローナル抗体の各種哺乳動物の第VIII因子に対するインヒビター活性の交叉反応性を測定した。H鎖A1ドメインを認識する抗体C5の交叉反応性はサルで7.0%、イヌで2.7%、ネコで16.2%であり、ブタ、ウシ、マウス、シャチではいずれも0%であった。H鎖A2ドメインを認識する抗体RFF/8の交叉反応性はサルで1.3%であったが、それ以外の動物ではいずれもほぼ0%であった。L鎖A3ドメインを認識する抗体NMC VIII/9ではいずれの動物でも交叉反応性を認めなかった。L鎖C2ドメインを認識する抗体NMC-VIII/6の交叉反応牲はウシ、マウス、シャチではいずれも0%であったが、サルで54.5%、イヌで130%、ネコで82.8%、ブタで13.4%であり、4種の抗体の中では最も高い交叉反応性が認められた。以上から、第VIII因子L鎖C2ドメインの立体的なエピトープ構造はサル、イヌ、ネコ、ブタにおいてある程度ヒトに近く、種を超えて保持されていることが予想され、C2ドメインが第VIII因子の機能上、非常に重要な領域であることが示唆された。
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