研究概要 |
CMVプロモーター制御下にBドメインを欠失したイヌFVIIIcDNAを挿入した組換えアデノウィルスを作製し、in vitroでその発現を検討した。HepG2(肝癌細胞由来),COS1(胎児腎臓由来),CPAE(肺動脈血管内皮細胞),HeLa(子宮上皮由来),MEG-01(巨核球由来)細胞にMOI:5-10で組換えアデノウィルスを感染させ、1週間のタイムコースで培養液中のイヌ第VIII因子活性と抗原を測定した。第VIII因子活性はヒト第VIII因子欠乏血漿を用いた凝固1段法で、第VIII因子抗原はAsserachrom VIII:Ag kit(Diagnostica Stago)を用いたELISA法で定量した。HepG2においては、第4日に第VIII因子活性が80mU/ml/10*6cells、第VIII因子抗原が15mU/ml/10*6cells、COS1細胞においては、第VIII因子活性が200mU/ml/10*6cells、第VIII因子抗原が25mU/ml/10*6cellsと十分量の活性と抗原を検出したが、その他の細胞系においてはbackground程度であった(使用したすべての培養細胞系は、組換えアデノウィルスが感染しうることを、LacZを担った組換えアデノウィルスで予め確認した)。また、発現された第VIII因子の活性の割には抗原量が低く、両者間に乖離を認めた。in vivoでのアデノウィルス投与を計画していたが、カナダQueens大学のグループがほぼ同様の第1世代アデノウィルスを用いた血友病Aイヌモデルに対する遺伝子治療を報告(BLOOD97:107-113,2001)した。第VIII因子の発現の持続は短期的で、肝臓毒性とインヒビターを含む免疫の問題が示唆され、現時点の認識では第1世代アデノウィルスを先天性遺伝性疾患の遺伝子治療用ベクターとして用いることは限界かと考える。アデノウィルス固有の遺伝子をほとんど取り去ったGut-lessなどの改良が必要である。そこで、第1世代アデノウィルスベクターと平行して、Salk研究所のI.Verma教授から供与された第3世代レンチウィルスベクターを用いた遺伝子治療研究を開始した。第3世代レンチウィルスベクターにCMVプロモーター制御下にクラゲGFP遺伝子を挿入した組換えレンチウィルス(rCS-CG)と、アルブミンプロモーター制御下と肝細胞特異的プロモーター制御下にBドメインを欠失したイヌFVIIIcDNAを挿入した組換えレンチウィルス(rCS-ACP、rCS-SCP)を作成をした。
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