研究概要 |
1型糖尿病の病因をHLA抗原遺伝子に代表される素因と環境因子の両面より検討している。(1)1型糖尿病の発症感受性遺伝子解析:HLA-DRβ鎖遺伝子、DQα鎖遺伝子、DQβ鎖遺伝子、CTLA-4遺伝子、NeuroD/BETA2遺伝子、内因性レトロウイルスIDDMK1,2-22遺伝子多型について検討した。(2)我々は日本人の多数例の解析の結果、SPIDDM群において母親が糖尿病である頻度が高く多くは2型糖尿病であることを明らかにした。これに対して発症率の高い欧米では、特に父親に糖尿病を有する頻度が高く、多くは1型糖尿病である。これ等の事実を背景にして(3)発症感受性遺伝子の両親からの伝搬について検討した。現在までに20家系について、両親、兄弟の血液か採取され、HLA遺伝子の発症感受性遺伝子がどちらの親から来ているか解析したが、家系の絶対数が不十分であった。 1)DQα鎖遺伝子:感受性遺伝子である0301は19人全員に認められ、内8例はホモ接合体であった。ヘテロ接合で0301が父由来は8例、母由来は2例、不明が2例であった。 2)DQβ鎖遺伝子:感受性遺伝子0401,3032は17/20例に認めた。3032/3032が2例、3032/401が2例、その他はどちらかのヘテロであった。3032は父から4例、母から1例、401は父から3例、母から5例であった。 3)DRβ鎖遺伝子:405、901、802が感受性遺伝子で19/20で陽性であった。この内901/901が2例、405/901が1例、405/802が2例であった。405の父由来は4例、母由来は5例、802は父由来が3例、母由来が2例、901は父由来5例、母由来2例であった。 4)CTLA-4:5歳未満発症E群では対照に比しA/Aの頻度が有意に低く、G/Gが有意に高かったが、E群が少なく。解決することは出来なかった。 5)NeuroD/BETA2遺伝子:対照に比しA/Aが低く、G/Gが多い傾向が見られたが、有意ではなかった。内因性レトロウイルスIDDMK1,2-22、ENV蛋白N末端から339,510番目のアミノ酸配列の変化を伴うA→G変異についても検討したが、有意な差が見られなかった。 6)今回の検討ではHLA抗原では発症感受性遺伝子が父由来は27例、母由来は17例で父親が多かった。特にE群では3032,901は父親9例、母親3例で父親が多く白人に一致した。
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