コレステロールや多価不飽和脂肪酸は、生体にとって重要な機能を持ち、生体膜の形成と維持に役立ち、乳幼児等においてはその成長と発達に応じて必要量は変化する。また、コレステロールと多価不飽和脂肪酸は、運動時や疾病時で消費量は増加し、成人より多くの量を必要とすると考えられる。このように成長発達及び生理的な色々な段階に応じ身体の要求量は変化するものと推定され、その必要量の算定は重要である。研究の目的は胎児、新生児、乳幼児が必要とするコレステロール量の算定を試みると共に、コレステロールや多価不飽和脂肪酸の組織内の欠乏によって起きる疾患の作成とその治療法の考案を試みる。 これらの研究目的を達成するため、東京大学医科学研究所(甲斐教授)らのグループとの共同研究において、病態モデルラットにおける脳でのコレステロール代謝をみた。麻疹ウイルス(MV)を感染させたラットの脳内ではコレステロールエステルが増加する。これはその構成脂肪酸の分析から、抹消からきたものではなく、脳内で合成されたものと推定された。そのような病態モデルでACATのmRNAの発現とコレステロールエステルの定量を試みた。それらの増加を確認したが、研究は継続中である。また、帝京大学小児科(阿部教授、現在は転出)の下では、胎児、乳児の成長、発達に及ぼすn-3およびn-6系列多価不飽和脂肪酸の栄養学的研究を行った。実験を担当した金子の学位論文として報告した。小児の栄養素として重要な鶏卵中の多価不飽和脂肪酸について、魚油投与家禽の鶏卵脂肪酸組成を調べ報告した。これら一連の研究通じて、小児に必要なコレステロール、必須脂肪酸量などの算定を行うべく基礎研究を継続している。
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