ウィルソン病の病因蛋白・ATP7Bの活性測定法確立に向けて、以下の検討を行った。 1)ウィルソン病患者の遺伝子診断 蛋白活性を定量するためには、本症患者の遺伝子変異部位を解明する必要がある。臨床的にウィルソン病と診断された44例の血液からgenomic DNAを抽出し、21の各エクソンをPCRで増幅し、ダイレクトシークエンスを行った。その結果、5例はArg778Leuのhomozygoute、1例はArg778LeuとThr935Metのcompound heteroであると遺伝子診断することができた。 2)copper transporting ATPase活性測定の検討 サンプルとして培養皮膚線維芽細胞を用いた。方法の原理は、銅を添加することによりATPaseが活性化され、ATPが代謝される。その減少するATPをルシフェリン・ルシフェラーゼ反応で感度よく定量することにより、ATPaseの活性を定量するものである。具体的には、サンプルに銅溶液を加え、反応させる。その後ATPとルシフェラーゼ反応液を加え、反応させオートルーマットでATPを定量する。まず、以下に示す反応系の条件を検討した。(1)添加銅の種類:塩化銅、グルタチオン銅、硫酸銅などの銅錯体を検討した結果、グルタチオン銅が最も望ましいと結論した。(2)反応時間の検討:種々の反応時間で検討した結果、ルシフェラーゼ反応開始後150分反応させるのが最も安定であることがわかった。正常コントロールの培養皮膚線維芽細胞で検討した結果、ATPaseの活性値は24-10pmol/mgPro./minであり、Km=10.1μM Vmax=143.7pmol Cu/mg Pro./min.であった。 以上の研究実績から、次年度は正常対照の例数を増やして、基準値を求めることと、遺伝子診断されたウィルソン病患者細胞でのATPase測定を行う予定である。
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