Wilson病は銅輸送ATPase(ATP7B)の欠損症であり、Menkes病はATP7Bに構造、機能が非常に類似したATP7A欠損症である。現在Wison病の確定診断は遺伝子診断や肝臓銅濃度測定でなされているが、約3割の患者は遺伝子診断できない。また、肝生検は患者に対する侵襲が大きい。そのため、より簡便且つ正確な診断法が望まれている。本研究は患者のリンパ球を用いてATP7B蛋白の活性測定方法を確立し、臨床応用することを目的とした。測定法の原理は、銅を添加することにより銅輸送ATPaseが活性化されATPが代謝される。その減少するATPをルシフェリンルシフェラーゼ反応で感度よく定量することにより、銅輸送ATPaseの活性を定量することである。[材料・方法]Menkes病患者、Wilson病患者および対照ヒトの培養線維芽細胞をホモジネート後、遠心し、上清をサンプルとした。サンプルに、私達が合成したグルタチオン銅錯体溶液、ATP溶液、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応液を加え、37℃でオートルーマットでATPの減少を時間経過で測定した。[結果・考察]対照ヒト細胞の銅輸送ATPaseの活性値は10-200pmol/mg.Pro./min.と非常に幅が広かった。患者細胞の活性値は正常対照に比較して低い傾向が見られたが、正常範囲のものもあり、また、再現性が非常に悪かった。反応に使用した合成したグルタチオン銅錯体溶液やATP溶液の濃度や反応条件を変えて検討したが、同様に再現性が悪かった。以上の結果より、測定法の再検討が必要であるとの結論に達した。
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