研究概要 |
最近,AIRE遺伝子の変異がAPECED(Autoimmune polyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystrophy)の原因となることが明らかとなった.AIRE遺伝子は,胸腺,リンパ節,胎児肝に発現する転写因子をコードしており,免疫学的寛容の成立に重要な役割を担っている可能性がある.そこで,1型糖尿病やGraves病にAIRE遺伝子がいかに関与するかを明らかにすることを目的とした. 対象は,小児期発症1型糖尿病患者(男子50例,女子75例,発症年齢0.5-16歳),およびGraves病患者38例(男子9例,女子29例,発症年齢3-16歳)である.これらの症例についてHLA-DRB1,DQB1遺伝子型およびCTLA4 exon1,49位の遺伝子多型(A/G)の解析が終了した. AIRE-1遺伝子は14エクソンよりなり,APECEDの患者でエクソン2,6等に遺伝子変異が報告されている.エクソン2,K(aag)83E(gag)変異について,primer e2F(tccaaccacaagccgaggagat)とe2R(acgggctcctcaaacac cat)を作成した.患児の末梢血より抽出したDNAをPCRにて増幅し,制限酵素Taq1で処理すると,mutationがなければ切断されず424bpのバンドとなるが,mutationがあると新たな酵素切断部位が誘導されて261bp,163bpの2本のバンドが出現する.エクソン6,R(cga)257X(tga)変異についてはprimer 5IF(gcggctccaagaagtg catccagg)と5IR(ctccaccctgcaaggaagaggggc)を作成した.制限酵素Taq1処理でmutationがなければ切断され222bpと61bpのバンドとなるが,mutationがあると切断されず283bpのバンドが出現する.現在,解析は進行中である. 本研究ではHLAおよびCTLA4遺伝子多型の判明した症例について,さらにAIRE遺伝子の解析を行うものであり,遺伝素因の相互関係についても解析を行う予定である.
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