乳幼児突然死症候群(SIDS)の病態生理並びに病因は未だ不明であるが、神経病理学的な検討により、SIDS児の中枢神経系は低酸素状態にあることはほぼ定説である。これは、GFAPの免疫組織化学によるgliosisの存在及び低酸素性アポトーシスのSIDS児の中枢神経系における増加により裏づけられてきた。一方で、SIDSの対象年齢については、国際的には、統計登録の上で、生後1か月から1年までとされることが多く、新生児SIDSを含むか否かについても論議があったが、出生直後の1週間を除いてSIDSに含むとする見解が強く、新生児SIDSという概念が是認される傾向にある。しかし、新生児SIDSの病態生理が生後1か月以降に発症するSDISと同一であるかについて未だ十分に検討されていない。そこで、本研究においては、生後1か月以降のSIDS26例(ブリュッセル自由大学より提供)及びそのコントロール12例及び新生児SIDS6例(高嶋より提供)及びコントロール3例についてアポトーシスの動態を検討した。生後1か月以降のSIDSにおいては、中脳の脚橋被蓋核におけるTUNEL陽性グリアの細胞密度が睡眠中の閉塞性無呼吸の頻度と関連すること、中脳の脚橋被蓋核におけるTUNEL陽性グリアの細胞密度が可塑性の指標であるGap43陽性細胞の平均spine数と相関することが示された。新生児SIDSにおいては、脳幹のパラフィン切片を用いて、TUNEL染色・活性型Caspase-3及びアポトーシスの抑制因子であるbcl-2の免疫組織化学を施行し、染色結果を半定量化した。TUNEL陽性及び活性型Caspase-3陽性ニューロンの細胞密度はコントロールの新生児肺出血例に若干高く、TUNEL陽性及び活性型Caspase-3陽性グリアの細胞密度特に橋核における細胞密度は新生児SIDS事例及び生後2か月のSIDS事例に高かった。
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