研究課題/領域番号 |
12670784
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
吉岡 俊正 東京女子医科大学, 医学部・医学教育学, 助教授 (60146438)
|
研究分担者 |
菅沼 太陽 東京女子医科大学, 医学部・薬理学, 助手 (00328379)
塚原 富士子 東京女子医科大学, 医学部・薬理学, 助手 (40119996)
村木 篁 東京女子医科大学, 医学部・薬理学, 教授 (50051446)
|
キーワード | ステロイド受容体 / 酸化的ストレス / エストロゲン受容体 / 熱ショック蛋白質 / 血管内皮細胞 / 尿毒性物質 / インドキシル硫酸 / 慢性腎不全 |
研究概要 |
酸化的ストレスによるステロイド受容体の機能変化について、エストロゲン受容体をモデルに研究を行った。エストロゲン受容体により調節を受けるレポーター遺伝子を導入したMCF7細胞では、過酸化水素あるいはメナジオンによる酸化的ストレスはエストラジオールによるレポーター遺伝子発現を有意に抑制した。この系では、抗酸化薬は酸化的ストレスの作用を減弱したが、細胞に遺伝子導入により強発現させた熱ショック蛋白質(HSC70, HSP90)の効果は認めなかった。これらの熱ショック蛋白質はエストロゲン受容体と相互作用を持つが、実験条件の中では酸化的ストレスに対して熱ショック蛋白質と受容体の相互作用変化を認めないか、発現した蛋白の量が少ないために効果が表れないのか結論は得られなかった。血管内皮細胞と単球(U937)細胞を用いたバイオアッセーにより、酸化的ストレスによって生じる細胞機能変化に対してエストロゲンが防御的に作用することを明らかにした。血管内皮細胞に過酸化水素による酸化的ストレスを加えると単球が内皮細胞表面に接着するが、エルトラジオールはその作用を減弱した。同様な作用は細胞内の活性酸素代謝産物濃度を上昇させるTNF-αによる内皮-単球相互作用でも認められ、エストロゲン作用の減弱する更年期婦人の血管病変の病態への関与が示唆された。この結果は平成14年3月の第75回日本薬理学会年会で報告される。 酸化的ストレスの病態モデルとして慢性腎不全の進行が検討された。慢性の腎機能障害の進行因子には様々な分子が想定されているが、腎機能が低下することによって生じる"尿毒性物質(uremic toxin, UT)もそのひとつである。UTの腎障害機序は明らかでなかったが、研究代表者らはUTが腎尿細管細胞に酸化的ストレスを生じさせ細胞障害を起こすことを明らかにした。UTとされる分子の中で、有機酸であるインドキシル硫酸(IS)は、有機酸トランスポーター(OAT-1)を強発現させた近位尿細管細胞(OK Cell)で濃度依存性に細胞内での酸化的ストレスを亢進させ生細胞数を減弱し、OAT-1を発現させていない細胞ではISの効果は少なかった。OAT-1発現細胞におけるISによる酸化的ストレスの亢進は、抗酸化薬あるいは有機酸トランスポーター阻害薬(プロベネシド)により減弱した。ISを作用させたOAT-1発現細胞では、細胞内のIS濃度が非発現細胞に比べて有意に高かった。これらの結果は、UTが細胞内の酸化的ストレスを起こすことを直接明らかにした。(Br. J. Pharmacol. 2002)現在、UTの細胞内遺伝子発現調節系への検討を進めている。
|