増殖因子Neuregulinの心筋細胞での働きを解明し、Neuregulinが先天性心疾患である心筋緻密層形成不全や心筋梗塞後の心筋リモデリングに際してどのように関わっているのかを解明するのが本研究の目的である。このため、先ずラット培養心筋細胞を用いてNeuregulinの心筋細胞における基本的な働きを、研究が進んでいるEpidermal Growth Factor(EGF)と比較検討した。 EGFとNeuregulinのレセプターであるErbレセプターの内、Erb-1、Erb-2、ErbB-4の発現がラット心筋細胞において確認された。また、ラット培養心筋細胞ではNeuregulin(20ng/ml)にてErb-2、ErbB-4のリン酸化が確認され、さらにNeuregulinによるMAP kinase(ERK)、Phospho Inositol-3 Kinase(PI3K)の活性化が確認された。一方、EGF(100ng/ml)ではErbB-1、Erb-B2のリン酸化が確認され、EGFによるERKの活性化は確認されたがPI3Kの活性化は確認されなかった。このように、これらのシグナル伝達においてErbB-2が重要な役割を担っていることが示唆されたため、dominant negative ErbB-2アデノウィルスベクターを作成した。現在このdominant negative ErbB-2アデノウィルスベクターを用いてEGF、Neuregulinによるシグナルがどのように変化するかを確認中である。
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