研究概要 |
昨年度の研究結果からニーマンピックマウスでは,神経細胞とマクロファージ系への脂質の蓄積と同時に,アストロサイトにも蓄積物質が確認され,神経細胞保護の機能が早期から障害され,その増強と共に死に至る可能性が示唆された。本年度はこのモデルマウスに骨髄移植を行い,神経細胞の傷害とアストロサイトの関与がどの様に変化するかを検討した。 spm/spmマウスでは既に5週齢で大脳および小脳にユビキチン陽性の変性蓄積物を神経細胞周囲の間質に認め,その周囲には陽性のマクロファージが存在していた。8週齢、13週齢と加齢が進むにつれ、前述の変化がより強く広汎に生じていた。しかし,骨髄移植を行った8週齢のspm/spmマウスでは,細胞間にユビキチン陽性の変性蓄積物は殆ど消失しており,正常のコントロールマウスとほぼ同様の所見を示した。なおマクロファージ系の細胞には一部でユビキチン陽性物質の蓄積を認めた。またマクロファージは神経細胞に隣接する形で認めた。しかし,神経細胞での変化は乏しかった。神経細胞の電顕像では,陽性物質はMCB様構造物として認められ,perikaryon, neuropilのいずれにも存在したが,移植後はperikaryonの領域のみ存在した。移植前のアストロサイトの増加は,神経細胞傷害による反応性のものと考えられた。移植後はこのアストロサイトが減少し,かつ蓄積物質は確認できなかった。本病では骨髄移植による神経症状の改善は認めないものの,脳内でも異常蓄積物の処理が行われる点が確認された事から,神経変性疾患の中には骨髄移植が臨床的にも有効な例も期待され,今後の治療法の取組みに示唆を与えるものと考える。
|