研究概要 |
本研究では成熟心筋細胞の自己移植および骨髄から誘導した心筋細胞自己移植を研究していたが、成熟心筋細胞移植は下記の如く困難であったため、骨格筋筋芽細胞に注目した。 【心筋細胞】コラゲナーゼ灌流法にてサルコメアを有する心筋細胞を単離し、正常心に移植した。1週間後の組織学的検討では宿主心臓内に移植細胞を認めることは困難であった。 【骨髄細胞】8週齢のgreen fluorescence protein(GFP)トランスジェニックマウスの大下腿骨より骨髄を採取し、パーコール法にて単核球を分離した後、これらを胎仔心筋細胞と同時に共培養し、GFP陽性細胞の形態変化を観察した。その結果、1週間以内に培養皿中の所々にGFP陽性で拍動する細胞を認め、αアクチン陽性であった。このことから骨髄由来の細胞が胎仔心筋細胞との共培養で短期間に心筋細胞に誘導されることが判明した。 【骨格筋筋芽細胞】ルイスラットの大腿部より骨格筋を採取し、これをコラゲナ-ゼ(II)・トリプシン処理にて単離し、PKH26でラベルした後、同ラットの急性心筋梗塞モデルに骨格筋筋芽細胞を移植した(移植群)。その後超音波検査にて心機能を継時的に4週間観察した。生理食塩水を虚血部に注入したものをコントロール群として比較検討した。 <結果>移植群では心不全の進行による左心室の拡大は有意に抑制され(左心室拡張末期径;コントロール群vs移植群:9.7±0.8vs8.0±0.8mm, P<0.01)、心収縮力も有意に維持された(左心室短軸面積短縮率;コントロール群vs移植群:38.4±6.9vs51.7±11.9%,P<0.01)。また、心筋梗塞サイズは有意に縮小されており、梗塞部の心室壁厚は有意に壁厚であった。移植群では梗塞部にはラベルされた移植細胞が確認され、梗塞境界領域の酸化傷害は有意に低値を示した。
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