研究概要 |
平成14年度は13年度に得られた1-3の結果に加え、4.に記述した如く、アポトーシスの抑制機序はBcl-xL,Baxによるとの従来の報告と異なり、Bcl2による抑制が主である結果が得られた。 この結果を米国腎臓学会(2002年11月)で発表し、英文誌に公表した(Xiaojie Gao, Hiromu Mae, Nobuhiko Ayabe, Toru Takai, Keisuke Oshima, Masuji Hattori, Takahiro Ueki, Jiro Fujimoto, Takakuni Tanizawa. Hepatocyte growth factor gene therapy retards the progression of chronic obstructive nephropathy. Kidney International, 62:4, 1238-1248,2002)。 【対象と方法】 1.腎尿細管間質線維化モデルの作成 一側尿管結紮ラットを作成し、腎機能、腎組織を結紮後2週と4週で検索する。 2.TGF-β、HGFの局在と遺伝子発現の検索 抗TGF-β抗体、抗HGF抗体、in situ hybridizationを用いて組織内におけるTGF-β、HGFのmRNAの発現とその局在についてPCR法を用いて確認する。同時に、HGFのレセプターであるc-metの発現も確認し、成長因子であるHGFの作用機序を推測する。 3.HGF遺伝子治療 ヒトHGF遺伝子をHVJ-リポゾーム法を用いて、一側尿管結紮ラットに週1回、4回筋注する。 【結果】 1.遺伝子治療ラットでは、腎内の内因性ラットHGFとその受容体であるc-metの発現を増加させた。 2.遺伝子治療ラットでは対照群に比し、腎間質の線維化とマクロファージの浸潤が有意に抑制された。 3.結紮後2週、とくに4週後では尿細管細胞の増殖が亢進し、アポトーシスが抑制された。 4.Bcl-2はHGF遺伝子導入群において増強されていたが、Bcl-xLやBaxには変化がみられなかった.. 【結論】 HGF遺伝子治療は慢性閉塞性腎症において尿細管細胞の生存率を高め、その線維化の進行を抑制する。BaxやBcl-xLよりもBcl-2が、HGFの抗アポトーシス作用に貢献している。
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