水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のエンベロープに存在する糖蛋白はVZVが細胞に侵入していく過程において、細胞のレセプターに接着するリガンドとして重要なところである。また感染細胞表面に糖蛋白が表出され、これに対する細胞性免疫や中和抗体が産生されることが判明している。このことから、この糖蛋白に注目して、水痘ワクチンOka株とその親株(野生株)における糖蛋白の遺伝子シークエンスを比較し、ワクチン弱毒化の分子学的な機序や免疫原性が保持されている理由を検討する目的で、今回の研究を行った。 水痘ワクチン株は市販のワクチンを用い、親株は阪大微研高橋教授から頂いた。英国野生株のDumas株をもとにPCRプライマーを作成、PCR産物を精製後autosequenserで分析する直接シークエンシングを行った。糖蛋白はgpE(ORF68)、gpB(ORF31)、gpH(ORF37)、gpI(ORF67)、gpC(ORF14)、gpL(ORF60)、gpKORF5)についてエクソン部分のシークエンス分析を行った。 結果はgpE(ORF68)、gpB(ORF31)、gpH(ORF37)、gpI(ORF67)、gpL(ORF60)、gpKORF5)についてはOka株とその親株との間に変異は認めなかった。糖蛋白の中でもっとも多いgE、2番目に多いgB、3番目に多いgHなど免疫学的に大切な部位については変異なく保持されていた。これがワクチンの免疫原性における有効性を保持していると考えられた。またウイルスの複製に必要と考えられているgEとgIも変異なく保たれていた。
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